ヒト幹細胞辞典 基礎知識

ヒト体性幹細胞と人工細胞の違いとは?わかりやすく解説

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ヒトの体はケガをしても自然に治る力があります。

それは、ヒト体性幹細胞と言う細胞の働きと言うことは、あまり知られていないのではないのでしょうか?

今回は、ヒト体性幹細胞とはどんな細胞なのか?

「ヒト体性幹細胞」と「人工細胞」の違いは何か?など分かりやすく解説します。

幹細胞とは?

幹細胞とは

幹細胞とは、私達のからだの組織や器官を維持するのに大切な細胞です。

そんな、私達にとって大切な幹細胞に、いま注目している分野があります。

次の項目で見て行きましょう。

幹細胞を使った再生医療の治療でできること

幹細胞は傷付いたり、古くなった細胞を入れ替えたり修復してくれる働きがあるので、再生医療の現場で幹細胞を使った治療がたくさん試みられています。

その一部をご紹介したいと思います。

・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・パーキンソン病
・ALS筋萎縮性側索硬化症
・アルツハイマー、認知症
・喘息、アトピー性疾患 など

このように、幹細胞は様々な治療・予防に役立てられているのです。

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ヒト体性幹細胞とは?

ヒト体性幹細胞とは

幹細胞のことを調べていると、ヒト体性幹細胞と言うワードが出て来ることがあると思います。

では、ヒト体性幹細胞とはどんな細胞なのでしょうか?

厚生労働省の資料を見てみると、下記のように書いてありました。

ヒトの身体の中に存在する幹細胞で、限定した分化能を保有する。例えば、造血幹細胞(各種血液細胞)、神経幹細胞(神経細胞やグリア細胞)、間葉系幹細胞(骨、軟骨、脂肪細胞)などが含まれる。

簡単に説明すると、人間のからだの中にある細胞で、一定の限られた種類の細胞になることができる細胞です。

例えば下記のような幹細胞が含まれます。

  • 【造血細胞】赤血球・白血球などの血液細胞になる
  • 【神経幹細胞】脳・脊髄などの神経組織の細胞になる
  • 【間葉系幹細胞】骨・軟骨・脂肪細胞などになる

ヒト体性幹細胞はからだの中で、傷付いた場所へ行き組織を修復したり機能を回復・再生するために働くと言う、重要な役割を担っています。

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ヒト体制幹細胞と成体幹細胞の違い

ヒト体制幹細胞と成体幹細胞の違い

幹細胞に関する本やインターネットで調べると「ヒト体性幹細胞」と書いてあったり「成体幹細胞」と書いてあることがありますよね?

内容を見てみると両方とも「体の中に存在し、いろいろな細胞に分化できる細胞」と言うような内容が書かれています。

この二つに違いはあるのでしょうか?

幹細胞ハンドブックを見てみると、下記のような説明がありました。

からだの中で働いている幹細胞は成体幹細胞(体性幹細胞・組織幹細胞とも言う)と呼ばれています

念のため厚生労働省の再生医療研究推進室に問い合わせしてみました。

「法律の中で定義している訳ではなく、研究者や学会によって判断される」と言う回答でした。

細胞自体に違いがあるわけではなく、研究者や学会によって表記が違うと言うことのようです。

※書籍によってはiPS細胞を成体幹細胞として挙げている場合もありますが、生物学的というよりは研究分野を軸として分類されています。ヒトカン(本サイト)では組織幹細胞の中で胎盤の一部、臍帯血、人体の細胞から由来するものについてを「成体幹細胞」とします。

※引用・岩波書店「幹細胞 ES細胞・iPS細胞・再生医療」/2016年/著:ジョナサン・スラック

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人工細胞とは?

人工細胞とは

調べてみると「人工細胞」と言う言葉も見掛けることがありますよね?

では、人工細胞とはどんな細胞のことを言うのでしょうか?

調べてみたところ、下記のように書いてありました。

はっきりした定義は成されていないが、一般的には細胞の機能の一部を人工的に再構成した細胞状の構造を人工細胞と呼ぶことが多い
引用:科学技術振興機構(JST)

ヒト体制幹細胞は、もともと人間のからだの中に存在する細胞を培養しているものですが、人工細胞は言葉通り人工的に作られた細胞です。

いま医療の現場では、幹細胞を使った再生医療が行われていますが、人工細胞を使うにはいくつかの問題があります。

  • 倫理的な問題
  • 拒絶反応の問題
  • 腫瘍化の問題など

これらの問題を解決するため、日々研究がされています。

例えば

ABO血液型とHLA型の組合せを持った細胞を製作(型が適合した場合に移植する)

拒絶されにくい細胞の製作

腫瘍発症リスクの遺伝子を使わないなど

まだ、安全性やコストの問題などがあり、実用されるには時間がかかりそうですね。

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続いては、ヒト体性幹細胞と人工細胞の違いを詳しく見て行きましょう。

ヒト体性幹細胞と人工細胞って何が違うの?

ヒト体性幹細胞と人工細胞の違い

ヒト体性幹細胞と人工細胞は、その他にどんな違いがあるのでしょうか?

治療に使われる幹細胞には3種類の代表的なものがあります。

【体内にある細胞】
・ヒト体性幹細胞
【人工的に作られた細胞】

・ES細胞(ヒト胚性幹細胞)
・iPS細胞(ヒト人工多能性幹細胞)

1つずつ詳しく見て行きましょう。

ヒト体性幹細胞

ヒト体性幹細胞

からだの中で指令があると、周りの状況に合わせて、色々な種類の細胞を作ります。

もともと人間の体の中に持っている物なので、倫理上の問題がなく、すでに治療に多く試みられています。

しかし

・年齢とともに減少してしまう
・体内にある数が少ない
・大きな欠損を補うことはできない

と言うデメリットがあります。

ES細胞(ヒト胚性幹細胞)

ES細胞

ES細胞は、受精卵が分裂しながら成長して行く過程でできる内部細胞を取り出して培養したものです。

ヒト体性幹細胞と違い、無限に増やすことができ、どんな細胞にも変化できる能力をもっています。

しかし

・倫理上の問題
・拒否反応のリスク

があり、現段階では一般的な医療に使うのは難しいとされています。

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iPS細胞(ヒト人工多能性幹細胞)

iPS細胞

iSP細胞は、人間の皮膚の細胞に、ある種の遺伝子を組み込んで培養したものです。

自分の細胞から作るため、倫理的な問題も拒絶反応も起こらないとされていますが

・癌化する可能性がある
・未分化細胞が残っていると奇形腫の形成につながる

などの問題があり、まだ研究段階で医療の応用には至っていません。

ES細胞とiPS細胞はまだ色々な問題を抱えていますが、問題を解決させるような細胞の研究も開発されつつあります。

問題が解決され、安全性が確保できれば、今後再生医療において重要な役割を果てしていく可能性がありそうですね。

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ヒト体性幹細胞と人工細胞のメリットとデメリットを比較

再生医療で研究がされている、3種類の幹細胞のメリット・デメリットを表にしてみました。

それぞれどんな特徴があるか確認してみてください。

幹細胞の種類 由来 移植の適合性 倫理問題 実用化 分化能
ヒト
体性幹細胞
体の臓器や組織のなかにある なし なし 培養技術の進歩により実用し始めている 多分化能
ES細胞 胚から作られる あり 胚や卵子の使用による倫理問題を避けられない 倫理面より実用はまだ 何にでも多分化能
iPS細胞 体細胞から作られる なし なし 研究段階 目的に応じて
多分化能

ES細胞とiPS細胞のそれぞれの課題が克服できれば、今よりもっと多くの病気の治療ができるようになる可能性があると期待されています。

 

まとめ

ヒト体性幹細胞は、私達のからだの中に存在し傷付いた組織を修復したり機能を回復・再生するために働く大事な細胞と言うことが分かりましたね。

まだ人工細胞である「ES細胞」と「iPS細胞」には課題が多く残っていますが、研究が進めばヒト体性幹細胞と同様に、医療の現場で使われる日が来るかもしれません。

「色々な病気を幹細胞が治してくれる」そんな夢のような日が来ることを期待しましょう!

 

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