ヒト幹細胞辞典 基礎知識

ES細胞(ヒト胚性幹細胞)とは?誰にでもわかりやすく解説

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幹細胞という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
ノーベル賞受賞で話題になったiPS細胞も幹細胞の一種です。

このiPS細胞と似た細胞にES細胞があります。

ES細胞とは一体なんなのか。
どうやって作られるのか、どんな研究がされているのか、抱える問題点など、分かりやすくまとめました!

幹細胞とは?

幹細胞とは?
幹細胞とは一体なんなのでしょうか。
ウィキペディアは次のように説明されていました。

ウィキペディア
分裂して自分と同じ細胞を作る(Self-renewal)能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されている。

つまり、幹細胞とは次の特徴がある細胞のことです。

ポイント

  • 幹細胞を作れる
  • 別の細胞を作れる
  • 無限に増え続ける

どんな細胞にもなれて、しかも無限に増え続けられるなんて、なんだか凄そうな細胞ですね。

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そんな幹細胞は、どんな分野で活躍しているのでしょうか。

再生医療とは

幹細胞の能力を活躍させている代表的なものが、「再生医療」です。

再生医療とは

病気やケガで回復しなかった部分を、人工的に作った臓器や組織を移植して再生させる治療法です。
この「人工的に臓器や組織を作る」ために、幹細胞が利用されています。

プラナリアという生物を知っていますか?
きれいな水辺に住んでいる微生物です。

このプラナリアの身体を切り離すと、なんと切り離された部位が再生し、また新しいプラナリアになるのです。
プラナリア

これは高い能力を持つプラナリアの幹細胞のおかげ。
この驚異的な再生能力をヒトにも応用できたらどうなるでしょうか。

どんな病気やケガになっても、身体の機能を再生することができるようになるはずです。

現在、さまざまな病気やケガに対し、再生医療の研究が進められています。

幹細胞を使った再生医療の治療にはどんなものがある?

幹細胞を使った再生医療の治療にはどんなものがある?
再生医療にはどんなものがあるのでしょうか。
既に治療として行われている症状には次のようなものがあります。

  • 白血病
  • 心不全
  • お肌や毛髪の悩み

再生医療が有効だとして研究が進められている症状

  • 骨髄損傷
  • パーキンソン病
  • ガン

論理上は幹細胞を使えばどんな細胞でも再生できるといわれています。

けれど、再生医療を選択しないほうがよいとされる場合もあるのです。

例えば、記憶をつかさどる脳への再生医療は慎重に行うべきだとされています。
どんなに細胞が再生されたとしても、脳が持っている記憶がどうなってしまうのか分からないからです。

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幹細胞の研究は大きく3種

幹細胞の研究は大きく3種
幹細胞には大きく分けて3種類あります。
ES細胞iPS細胞成体幹細胞です。

それぞれの特徴を比較してみました。

ES細胞 iPS細胞 成体幹細胞
もととなるもの 受精卵 体細胞 身体の中に存在する同細胞
移植時の適合性
倫理的課題 あり(受精卵がもととなるため) なし なし
課題 ヒトでの安全性確認
・倫理面
ヒトでの安全性確認 採取数の少なさ(培養技術)
どんな細胞にもなれるか ×

人工的な幹細胞であるES細胞、iPS細胞。
ヒトの体内にもとから存在する成体幹細胞。

それぞれ研究が進められていますが、実際に再生医療として使用されているのは成体幹細胞がほとんどです。

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ES細胞とはどんな幹細胞?

ES細胞とはどんな幹細胞?
人工的に作られた幹細胞であるES細胞とは一体なんなのでしょうか。

ES細胞は「Embryonic Stem Cell」の略です。
直訳するとEmbryonic(胚)+ Stem Cell(幹細胞)。

胚(はい)とは

多細胞生物の個体発生におけるごく初期の段階の個体を指す。(ウィキペディア)
受精卵が成長しつつあるものをいいます。

つまり、受精卵が元になった細胞です。

受精卵はヒトの元になるものなので、そこから作ったES細胞も、どんな細胞にでもなれるというわけですね。

ES細胞はどこからどう作られるか

ES細胞はどこからどう作られるか
ES細胞は、受精後1週間ほどたったヒトの受精卵から作られます。
不妊治療で使われなかった受精卵を提供者の許可を得て使用しています。

1981年にイギリスで作られたマウスES細胞が、最初のES細胞です。
そのおよそ17年後の1998年、アメリカでヒトES細胞の作成に成功しました。

ES細胞でどんな研究がなされているか

ES細胞でどんな研究がなされているか
ES細胞を使ったヒトに対する治験は、国内ではまだ行われていません。

2018年3月、国立成育医療研究センターが国へ治験の申請をしていますが、許可が出たかどうかの報道はまだされていないようです。

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申請された治験の内容は、生まれつき肝臓病のある赤ちゃんへ、ES細胞から作った肝細胞を移植するというもの。
生後三ヶ月以内の赤ちゃんには肝臓移植ができないため、ES細胞で作った肝細胞を注射し、体調を安定させます。
その後、生後三ヶ月を過ぎてから移植を行うという計画です。

また、ES細胞を使って視神経を作る研究も成功しています。

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視神経は頭の重要な部分にあるため、治験が難しいとされていました。
しかし、ES細胞によってヒト細胞を使った研究ができるようになったので、病気の原因解明や、より効果の高い新しい薬の開発が期待されています。

アメリカではすでに、ヒトに対するES細胞を使った治験が行われています。
骨髄損傷と視力回復に関する治験が行われましたが、どちらの治験も期待されていたほどの結果が出たとはいえない状況です。

骨髄損傷の治験は資金難で、研究が一時打ち切りとなってしまいました。
視力回復の治験も決定的な結果が出たわけではありませんでした。

このように、人工幹細胞を使った治験はまだまだ研究段階です。

ES細胞の抱えている問題点は?

ES細胞の抱えている問題点は?

ES細胞には大きく2つの問題があります。

  • 倫理的問題
  • 拒絶反応

ES細胞の拒絶反応

ES細胞から作られた臓器を移植する場合、拒絶反応が出る可能が高いとされています。
これは、ES細胞が患者本人の細胞でないため起こる問題です。

この問題に対しては現在も研究が進められています。

ES細胞の倫理的問題

先ほどもお伝えしたように、ES細胞は不妊治療で使われなかった受精卵がもととなっています。
もちろん提供者の許可を得て使用していますが、ヒトになる可能性があった受精卵を破壊することに抵抗を持つ人も少なくありません。

宗教的な思想も関わり、ES細胞での研究が禁止になっている国もあるほどです。

日本でもES細胞を使った再生医療の研究が長年禁止されていました。
けれど2014年以降、治療を目的としている場合に限り、研究ができるようになりました。

iPS細胞が作られてもES細胞の研究が続けられている理由

iPS細胞が作られてもES細胞の研究が続けられている理由

iPS細胞を生み出した京都大学の山中教授は「ES細胞とiPS細胞の研究は両立して進めるべき」と、主張しています。

ES細胞の問題点を克服したともいえるiPS細胞。
どうせなら、ES細胞の研究をやめてiPS細胞の研究だけを進めるべきだと疑問に思う方も多いのでは。

山中教授の主張の理由は、大きく2つあります。

ポイント

  • iPS細胞の安全性
  • ES細胞の研究実績の有効活用

iPS細胞の安全性

iPS細胞の研究はまだまだ歴史が浅く、安全性も確立されていません。
そのため、今後重大な問題が出てくる可能性がゼロではありません。

ES細胞の研究をやめてしまった状態で万が一iPS細胞に問題が発覚した場合、そこからまたES細胞の研究を始めるとなると、再生医療の研究が大幅に遅れてしまうのです。

ES細胞の研究実績の有効活用

ES細胞はiPS細胞よりも歴史が長く、研究データも大量です。

ES細胞のデータとiPS細胞のデータを比較することで、より効率的に研究を進めることができます。

このような理由から、現在もES細胞研究の重要性が認められているのです。

ES細胞がこれから医療や美容の分野で期待できることは?

ES細胞がこれから医療や美容の分野で期待できることは?
ES細胞に限らず、幹細胞を使った医療は凄まじい勢いで進化しています。

病気やケゲで身体の一部が修復できなくなってしまっても、替えがきくという状況も論理的にはありえます。

また、医療だけでなく美容の分野でも「老化をなくす」という根本的な施術が可能になれば、さまざまな悩みから開放される日がくるかもしれません。

まとめ

まとめ
人工的な幹細胞であるES細胞。
医療の発展には倫理的問題がつきものですが、ES細胞は特にハードルが高い分野だといえます。

ES細胞を使った研究を進めるため、日本国内でも法の整備が進められています。

再生医療という、すべての人に希望をもたらす分野の研究をぜひ推し進めてもらいたいものですね。

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