ヒト幹細胞辞典 基礎知識

幹細胞とは?種類はあるの?成体幹細胞・ES細胞・iPS細胞 の違いについてわかりやすく解説!

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トカゲは尻尾が切れても再生させることができます。
これは「幹細胞」の働きによるものです。

医療はもちろん、コスメなど幅広い分野で注目されている幹細胞。
テレビやニュースで耳にする「iPS細胞」も幹細胞の一種です。

幹細胞という名前からは「なにやら重要そうな役割を持っている細胞」というイメージがわきますが、実際にはどんな細胞なのでしょうか。

難しい話になりがちですが、専門的な知識がなくてもイメージできるように、分かりやすくまとめてみました!

幹細胞とは?

幹細胞とは?
すべての生き物の身体は細胞でできています。
人の身体はおよそ60兆個もの細胞が集まっていて、心臓を動かす細胞、血液をきれいにする細胞、皮膚をつくる細胞など、それぞれの役割は多種多様です。

そんな中、幹細胞が注目されているのは、その機能に理由がありました。
幹細胞は「細胞を作る」細胞なのです。
他の機能を持ったどんな細胞を作ることもできますし、自分自身を複製して幹細胞を作ることもできます。

ポイント

幹細胞はどんな細胞でも作ることができる

通常の細胞は数十回分裂すると、それ以上分裂できません。
たとえば、皮膚が傷ついて皮膚細胞が傷を修復しようとしても、分裂が追いつかない場合があります。
そこで、幹細胞が皮膚細胞を作って補うのです。

このように幹細胞が新しく細胞を作るのは、古くなったり汚れた細胞を入れ替えるためや、病気などで傷ついた細胞を補充するためなのです。

チェック!

幹細胞の働き

  • 他の種類の細胞を作ることができる
  • 幹細胞自体も作ることができる

さらに詳しく

幹細胞の再生医療の研究は大きく3つ

幹細胞の再生医療の研究は大きく3つ
幹細胞は人工的に作られたものと、もともと身体の中にあるものに分けられます。

現在、幹細胞を使った再生医療の研究では3種類の幹細胞が主流となっています。

人工的な幹細胞

  • ES細胞
  • iPS細胞

身体の中にある幹細胞

  • 成体幹細胞

それぞれを詳しく見ていきましょう。

ES細胞の特徴

ES細胞の特徴
ES細胞とは、受精卵から取り出した細胞を元に作られる幹細胞です。
受精卵はヒトのおおもととなる細胞なので、これから作られるES細胞はほとんどどんな細胞にもなることができます。

けれども、患者と受精卵は全く同じ遺伝子を持っているわけではないので、ES細胞から作った組織や臓器を移植した場合に拒絶反応が起こる可能性があります。

また、ヒトになる可能性があった受精卵を使うため、倫理的な側面から研究が難航しています。

ポイント

ES細胞は拒絶反応が起こる可能性あり&倫理的なハードルが高い

不妊治療などで使われなかった受精卵が用いられますが、宗教や政治も巻き込み、ES細胞研究に規制がかかっている国があるのも事実です。

iPS細胞の特徴

iPS細胞の特徴
iPS細胞とは、人間の皮膚や血液などの細胞へ人工的に手を加えて幹細胞化させたものです。
ほとんどどんな細胞にもなることができます。

ES細胞と機能は似ていますが、成り立ちが大きく異なります。
本人の細胞を元にiPS細胞を作ることができるので、移植時の拒絶反応が起こりにくく、ES細胞のような倫理的なハードルがありません。

ポイント

iPS細胞は拒絶反応が起こりにくく、倫理的なハードルがない

iPS細胞といえば、京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

正確には「人工多能性幹細胞」といい、英語で「induced pluripotent stem cell」と表記します。
山中教授が流行りのiPhoneやiPodから着想を得て「iPS細胞」と名付けたそうです。

成体幹細胞の特徴

成体幹細胞の特徴
成体幹細胞とは、骨髄や脂肪など、身体の決まった場所に存在する幹細胞です。
成体幹細胞にも種類があり、それぞれ特定の種類の細胞になることができます。

たとえば骨髄の中にある「造血幹細胞」は、赤血球や白血球など血液に関連する細胞を作ることができます。

ES幹細胞やiPS幹細胞と違ってどんな細胞にもなれるわけではありません。
ですが、本人の細胞が元になるのでiPS細胞と同じく拒絶反応が起こりにくく、倫理的な問題もありません。

ポイント

成体幹細胞は拒絶反応が起こりにくく、倫理的なハードルがない

なにより、もともと体内にあった細胞なので人体への安全性の研究が最も進んでいます。

ES細胞、iPS細胞、成体幹細胞をわかりやすく比較

ここで、3つの幹細胞を比較できる表を作りました。
それぞれの特長を確認してみてくださいね。

ES細胞 iPS細胞 成体幹細胞
もととなるもの 受精卵 体細胞 身体の中に存在する同細胞
移植時の適合性
倫理的課題 あり(胚や卵子由来のため) なし なし
課題 ヒトでの安全性確認
・倫理面
ヒトでの安全性確認 採取数の少なさ(培養技術)
どんな細胞にもなれるか ×

ES細胞、iPS細胞、成体幹細胞、再生医療で実用化が進んでいるのは?

ES細胞、iPS細胞、成体幹細胞、再生医療で実用化が進んでいるのは?
「再生医療」とは、病気や怪我などで失われた機能を回復させるための治療です。
幹細胞の「他の細胞を作ることができる」という機能は、この分野にうってつけといえます。

3種類の幹細胞はそれぞれ研究されてきた歴史が異なりますが、実用化が最も近いのはどの幹細胞なのでしょうか。

ES細胞の研究

ES細胞の研究
1983年にES細胞研究のもととなる、マウスの受精卵を利用した研究が始まりました。
それ以来多くの研究が行われてきましたが、人体にとって安全性が確認されている幹細胞治療はほとんどありません。

とくにES細胞は倫理面から研究が滞っているというという状態もあり、国内ではES細胞よりもiPS細胞を使った治験が多く行われています。
とはいえ、2000年代に発表されたiPS細胞よりもES細胞の実験経験や資料は多く、現在も研究は進められています。

2018年にはES細胞から作った肝細胞を難病を持つ赤ちゃんへ移植するという臨床試験が予定されています。
これが国内では初めてのヒトを対象にしたES細胞の研究となります。
この結果によっては、国内でのES細胞研究が大きく発展する可能性がありそうです。

iPS細胞の研究

iPS細胞の研究
先ほどもふれましたが、京都大学の山中伸弥教授によってiPS細胞が発表されたのは2006年のこと。

iPS細胞は再生医療はもちろん、新薬の開発病気の原因解明に役立つと考えられています。
人体ではできないような薬の実験をiPS細胞を使って行ったり、難病の患者さんの細胞からiPS細胞を作り病気を再現して研究したり。
iPS細胞による医療の飛躍が期待されています。

動物を用いた実験を経て、2014年にはiPS細胞で作った網膜を移植するという研究が始まっています。

成体幹細胞の研究

成体幹細胞の研究
ES細胞、iPS細胞と見てきましたが、最も実用化が近いといわれているのが、成体幹細胞です。
成体幹細胞の研究歴史は古く、造血幹細胞が発見された1940年代から始まったといわれています。

現在ではアルツハイマーや認知症、白血病、肝臓疾患、腎臓疾患、アトピー、蕁麻疹など、成体幹細胞を使ってさまざまな病気の治験が進められています。

ただし、人体にある成体幹細胞の数は多くなく、年齢とともに減少していきます。
体外での成体肝細胞の培養技術の向上が進められています。

チェック!

実用化が近いのは成体幹細胞

まとめ

まとめ
どんな細胞を作ることもできる「幹細胞」についてご紹介しました。

すでに研究現場では幹細胞を使っていろいろな細胞を作ることに成功しているようです!
ただし、その細胞がたくさん集まってできている臓器をつくるのはまだ難しいようです。

けれど、iPS細胞の作製に成功したように、今は不可能な治療が技術の進歩によって治療可能となる日も近いといえそうです。

ヒト幹細胞とは何かについてもっと知りたい方は下記の記事を参照してください。

さらに詳しく

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